◆幻想連鎖
千波 一也

おだやかな雨のすきまのファンタジア、合わせ鏡に時計を捨てて




お逃げなさい、鳥のかたちの切なさよ翼が翼を捨て去るまえに




細々と千切れて可憐な嘘ばかり燃やせやしない夕暮れのなか


夕暮れのピアノに満ちる地平線ゆびさきにおうマゼンタの砂




砂粒を盗む涙をつかまえた枯れない花野みかづきのうみ


真夜中にひとつの舟の過ちが拾われてゆく花を咲くため




透きとおる命のありかを燃やす舟ただ音もなく対岸になる




燃やすほど樹木の肌はざわめいて群れなす風の孤独を浴びる


ピリオドは氷を嫌う風として渡り続けるプロペラの音


あといくつ乗り継ぎゆけば星になる氷のしたの炎をいくつ




忘れなさい、羽ばたけばなお射抜かれます剣をもって星影たちは


閉ざされた階段に射すハーモニー、闇も光もひとしくかなしい




目覚めたらそれがはじまりラビリンス、硝子の響く階段のなか








短歌 ◆幻想連鎖 Copyright 千波 一也 2008-01-27 23:25:23
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【定型のあそび】