「ライン」
灯和
いつかのふゆのはじまりの日
一人 漂うような面持ちの彼女は
白く塗られた、どこでもない場所に立ち
満月の空が落ちるのを、待っていた。
(雪が、
(降っていたから だったか。
何気ないスカートのひらめきに、
真昼の太陽が
そっとまばたきを返している。
口付けだったかもしれない。
スカートの染みもまたたいて、
(消える)
* * * * *
?いのち?を手にとるにつれて、
足跡を見失ってしまうのだろうか。
自らの道筋を。
自らの現在地を。
(さよなら、と呟いて/
地面を蹴る感じに似ている)
キャンバスに描かれたゆるやかな放物線は
やがてそこから、未来が生まれていくことを
表したにすぎなくて、
絵筆を雪に浸した彼女の(いつの間に
透き通るような素肌へと(雪は積もっていたの
居場所を探し始める。 (だろうか
だけど今なお、
キャンバスの空の
真っ白なラインは
呼吸をしている!
* * *
溢れ出すヒカリの空が
落ちてしまうのを期待するのは、
もうしばらくやめておこう。
飽和してしまいそうに優しく、
哀しい、彼女から愛された私に
始まりなんて、
なかった。