新姓:まつした
加藤泰清

歪んだ亀裂のすきまで舌をころがしている、君よ
君の名は口裂け女だ!
まつした君はすかさず切り返す
ぼくは口は裂けていない
ここはすなわち第二のへそさ
諭すように君はぴんと伸ばした人差し指を
鼻の下のシルエットにはめこむ
つんとすました表情が素敵な君は
実は紳士な気遣いで溢れていて
いつだってぼくに笑われる宿命だ
誰かが君を笑うなら
ぼくはそいつと手を取り合って人中コークスクリューだ
これだけ愛しているんだ、君よ
いつしかぼくは叫んでいた
「おまえを嫁にもらってやろうか!」
君は無言で第三のへそをひくつかせた
実に教養に満ちた礼儀だ
そう見えた
一人の紳士がそこにいた
そして淑女は舞台を降りた


自由詩 新姓:まつした Copyright 加藤泰清 2008-01-23 23:25:27
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