らせん階段
小川 葉

たましいの
とても遠いところに
らせん階段をのぼる人がいる
僕らは気づかないふりをして
紅茶を飲む午後のひとときも
その人はいつでも
らせん階段をのぼり続けている

とても落ち込んだ時
僕らはらせん階段のことを思い出す
それは意識的に
というよりも
あちらからこちらへ
やってくる
そんな感覚に
むしろ近い

いつになったら
階段をのぼり終えるのだろう
ふと僕らはそう呟いて
無意識のうちに
空を見上げている

すると
そこには本当に
らせん階段をのぼる人がいるのだ
ほんの一瞬だけ
太陽の光に遮られて
その瞬間は
けっして明らかではないけれど
くるくる
くるくる
せわしなく
忙しく
まるでこのあいだまでの
自分みたいに
あまりにも
一生懸命にまわるものだから
僕らはそれが
可笑しくて
可笑しくて
いつのまにか
微笑んでさえいて
やがて失っていたものを
取り戻しはじめていることに
僕らはふと気づくのだ


自由詩 らせん階段 Copyright 小川 葉 2008-01-23 02:15:24
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