光の骸(再々改訂版)
ダーザイン

間遠に灯るガス燈の火を
ひとつひとつ落としながら
どこまでも
迷い道をたどってきました

鳩色の街に
静かに降り積もる粉雪
きしきしと
水晶が発振する音が聞こえます

いつの日にか
夜の形をした蝶が
あやしい光の翼を広げ
白みはじめた大気の中に溶け込んで
草原の黄金の舌が東の空に這い登り
鳥たちと奏でる曙のコラール

石段をひとつひとつ踏みしめて
坂道を登りつめると
羽の無い
悲しい目をした天使がひとり
薔薇色に身を染めて微笑んでいる

あなたとは
どこかで会ったことがありますね

 可愛い子供が亡くなったとき
 なにも言葉にならなかった
 なにも言葉にならなかった
 信号無視の車を先頭に
 次々と轢き殺されて
 甥子はさぞかし痛かっただろう
 辛かっただろう

 気丈に耐えていた父親も
 甥の棺を入れた釜のふたが閉じられると
 叫ぶように泣いた

 享年八歳
 甘えんぼうで 優しい子
 鬱を病んでいた僕がストーブの前で横になっていると
 よくお腹の上に乗ってきて一緒に寝ました

 幼い弟は
 病院から戻されてベットに横たわっている兄について
 「お兄ちゃんいつ起きるの」と
 母親に問うたそうです
 でも幼いながらにすぐに理解した
 後に 知らない人に
 「兄弟は何人?」と聞かれると
 「本当は二人なんだけれど」と
 問うた者には解らない悲しい思いを胸に答えていました

 しばらくして甥が夢に出てきました
 甥は目が見えず 体が非自由なようで
 暗い影のような姿になって
 家の居間を這っていました
 迷っているのかなと思った僕は
 すぐに飛んで行って抱きしめました

 それ以来、甥の夢は見ていません


空には神様の痕跡もなく
私には赦すことも赦されることもないのだけれど 
存在することのないひとつの唄を
唄うことができただろうか
空の青みをひとつかみ
手にすることができただろうか

光の骸を胸に抱いて
間を歩む歳月を
悲しい目をした天使がひとり
そっと微笑んで
見つめている


自由詩 光の骸(再々改訂版) Copyright ダーザイン 2008-01-22 19:27:41縦
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