アンデス
ダーザイン

南米帰りの友人が
土と光の匂いをまとい
訪ねてきた日のこと
土産は
幾つもの見知らぬ異郷のお話と
太陽神のペンダント
パタゴニヤの荒野では
荒らしに行き暮れ
アンデスの稜線で
ピトン替わりに打ち込んだのは
魂の形をした光の楔
そんな話を
更けていく夜の中で
一人この部屋の中で思い返すと
過ぎたことはみな
幻のようにも思えて
誰か見知らぬ者の
記憶のようにも思えて
ちびりちびりとウイスキー舐める
肝硬変の老猫は
春まだ遠い北の辺土の一隅で
丸くなるのも億劫で
薄目を開けて虚空に見つけた
透明な物にも無関心で
僕は遠い記憶を呼び覚まし
太陽の石に火を灯してみたのだけれど
星明りもない真っ暗な街道を
炬火を掲げどこまでも行けば
夜の果ての見知らぬ街で
執り行なわれていたのは誰の葬儀

屍は鳥にくれてやる


自由詩 アンデス Copyright ダーザイン 2008-01-22 19:25:31
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