みどりの草原、青い空
佐々宝砂
(私の砂男に)
描いたようなみどりの草原、青い空、
白い雲がにじむのはカメラの曇りのせい、
すべて出来合のうるわしい風景、
できる限り倍率をあげてみよう、
くるくるまわる水素原子が確認できるくらいに、
局部銀河群のはしっこが指させるくらいに、
ここには何もかもが揃っていて、
満たされないのは何もかもが揃っているからで、
そこの水たまりにはユスリカが揺れ揺れして、
あそこの木々では毛虫が糸を引く、
こんな世界にいてさえも、
猫は小鳥を追っかけるのだし、
小鳥は虫をついばむのだし、
明日になればあなたがやってくるのだと、
アルファベットの羅列を静かに嚥下すれば、
真冬の深夜あめふる狭い庭先に、
描いたように草原はみどり、空は青く、
愛していますあなた、
どうか私を連れて行ってください。