自鳴琴の夜
まどろむ海月


  *註 久々の新作ですが、難解な漢字表現にこだわってみました。
    よみは以下のようです。自鳴琴(オルゴール) 玻璃(はり) 
    坩堝(るつぼ) 変化(へんげ) 掠れ(かすれ) 絛虫(さなだむし) 
    蔓(つる) 小函(こばこ)  暁(あかつき) 綴られ(つづられ)






   自鳴琴の夜





星空に眠る私の
青い夢の頬に
夜風のように
触れたのは
天使の甘い羽音
ではなかった



 あの夜
 冷気の音が
 微かに響き
 たしかに
 夜空の玻璃は
 壊れた

 白磁の花瓶は
 花を散らしながら
 闇に落ちていった





その調べはあまりに甘く
右手に月影 左手に星影を浮かべ
微笑みながら君は回転を早める
くるる るる くる
実存から永遠への
坩堝を墜落しながら



 カタカタと鳴る
 脳髄まで暴かれたが
 愛は見つからない
 あいはみつからない
  I lost your ・・
 自動人形を操るのは
 螺旋状の自然力
 撥条仕掛の笑みにも
 ばねじかけのえみにも
 骨牌の理性にも
 カルタノリセイニモ
 刻印された謎がある

 渦巻く霧の中
 植物模様に変化する
 掠れがちな
 ルーンの呪文

 宇宙の闇森を辿り
 絛虫のような蔓に導かれ
 見つけた小函には
 薔薇の心臓





脈打つ鼓動が止まらない
暁の気配に
静寂を描く空間
白い画面の暗闇に
綴られた吐息
朝は繰り返されるが
真珠肌の君はその
響きを知らない







今では
時の果てに
歩み去る
静かな道
しか
見えない




















自由詩 自鳴琴の夜 Copyright まどろむ海月 2008-01-15 17:21:49
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