月はすべての人に優しい
山崎 風雅

 窓から覗くのは人の気配の消えた通り
 街灯が暖かい
 自分の部屋にキャンドルを灯す
 それは神聖な時間
 それは私だけの時間
 誰からも邪魔されず
 深深と心の奥の細道に踏み出して行く

 あまりにも時代は早く加速していくので飛ばされそう
 しがみつくほどの暮しでもないけれど
 私は何故だかここから離れられずにいる

 愛しい人はもう眠りの洋を漂っているだろう
 距離なんて関係ない
 この気持ちに嘘はないのだから

 あまりにも遠回りし過ぎたかもしれない
 でも、旅立ちに遅過ぎることはないだろう
 真夜中のキャンドルは神秘である
 燃えあがる命
 この炎のように赤々と慄然と人生に立ち向かおう
 そう思う

 窓の向こうに月が輝いている
 月は笑っているようだ
 月は優しい
 すべての人に優しい




 


自由詩 月はすべての人に優しい Copyright 山崎 風雅 2008-01-15 02:14:18
notebook Home 戻る