こもれび
小池房枝

木漏れ日が
どうして丸いのか知っていますか
私は
丸くない木漏れ日を見たことがあります

金環食の瞬間を待ちながら
大勢のひとが
空ばかりを見上げていたとき
木漏れ日はどれもみな
大地で
欠けてゆく太陽の形して躍っていました

三日月形
にやにや笑いの口元の群れは
目だけが連なる妖怪
目々連のようでもありました

五月
新緑を得た木々は
六月
光りをまた木漏れ日に結び
時折りくっきりと
ピンホールカメラに映しだされるのは
一枝ごと
葉っぱ一枚分ほどの彼ら自身

樹上にて
忙しなくあぎとうものたち
垂れ下がるな
落ちてくるな

求愛求餌の小鳥たち
折角その口に咥えているものを
振り回すな
毛を散らすな
 
この星の食物連鎖
速やかに疾く立ち上がりゆけよ


自由詩 こもれび Copyright 小池房枝 2004-06-20 23:50:18
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