冬の夜のスケッチ
まどろむ海月







冷たく冴えた月光に
白く抑えつけられて
家並みは動かない




家並みの間を
老いた野良犬が
痩せた影を落とし
トコトコと 走る
  ( この冬が越せるだろうか… )


月光に白く縁取られて
雲は過ぎていくが
  ( ああ 谷川の泡のようだ )
月は はるか上空で
見ているのだった




 「なあ 月よ……」
 月の周りにいた闇がささやいた
 月は何もこたえない
 それは ただ
 それだけのこと…



 今度は月が闇にささやく
 「なあ 闇よ……」
 しかし それもまた
 それだけのこと…






こうした美しい夜
はるかな下の泡雲の
そのまた下の小さな街に
その中を流れる川が
聞く人もいないこの夜も
昼間と変わらない
せせらぎを
たてている


















(註 「家並み」はヤナミ、「泡」はアブク、と読んでいただければうれしいです。)



自由詩 冬の夜のスケッチ Copyright まどろむ海月 2008-01-07 20:21:20
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