地下鉄
佐藤伊織

祈りは
誰かにむけるのではなく
私の中に沈んでいくだけだった



地下鉄は
風景なんて
みえないんだ


しらなかったよね
電車に乗って
どこまでも
見渡す限り
風景が広がる
スクリーンに映し出された
映写機のように
私の顔を映しだす



祈りは
どこに繋がるのだろう
このトンネルの先に
ライトを闇の中にしずめて
映し出さないもの



あの闇を照らすと
あの顔、顔、顔の向こう側
見えないものを見ようとして
映写機は音もなく廻る



ぽっかりと開いた穴が
大きくなると
列車は決まって大きな軋みをあげて



駅は
細波と光の照り返しで
ほんの少しだけ揺らいでいる





自由詩 地下鉄 Copyright 佐藤伊織 2007-12-30 03:12:22
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