でんりゅう
小川 葉

イルミネーションの
絆はでんりゅうだった

絆はいともたやすく
つながったり
はなれたりした
しかしそれはまだ
本当の絆ではなかった

イルミネーションの最終日
でんりゅうが止められるまで
最後の一灯が消えるまで
家族は待ちわびた

電球は生きたまま
ころされた
ころされた電球に
それ以上だれも用はなかった
この家族以外には
十分すぎた

綺麗だね
奇跡のようだった
家族の周辺が
イルミネーションよりも美しい
あわく消えそうな
光につつまれていた

でんりゅうは間もなく
供給を絶たれ
家族の光も
生きたままころされて
なお絆であり続ける

ふと僕はあの日
家族が乗った船が
沖にながされて
みんなで海の一部分に
なれたかもしれなかった

消えてしまうには
光はまぶしすぎた
やさしくなるほどに
でんりゅうは強く
強く流れた

それはフィクションなどでは
なかった


自由詩 でんりゅう Copyright 小川 葉 2007-12-28 01:36:06
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