夜紙
木立 悟





わずかな凹凸が言葉をはじき
異なる言葉に積もり重なる
鳥やら 姫やら
肌やら 毒やら


木々のむこうをすぎる紙
たなびきは左へ
在るだけの音へ


まばたきのすきまが月になり
雨や雪の日に空へゆく
そうでない日は 部屋のすみにいる


大きな窓の部屋
窓をあけると別の窓
貼りついた景から来る光
布は皆ゆうるり泳ぎ
布は皆 ゆうるり描き


針葉樹の葉が雪に落ち
何かをずっとつぶやいている
紙でできた動物たち
雪明かりから雪闇へと去る


やさしげな目が空を馳せる
誰にでもすぐ涙を見せる
ほんとうの虹を探し出すには
光と鉄の絵の具が足りない


終わらせようと
何度も何度も決めたのに
またはじまりを見てしまう
かじかんだ手のひら
言葉こぼす手のひら


紙の羽や紙の四肢
雨や雪を巡りなぞり
燃され重なり再び生まれ
原をつなぐ言葉のかたわら
小さな器に降りそそぐ

















自由詩 夜紙 Copyright 木立 悟 2007-12-27 16:39:32
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