クリスマスの夜 
服部 剛

今は亡き作家が
生前過ごした祈りの家を目指し 
地下鉄の風が吹き抜ける 
階段を地上へ上る 

煉瓦の壁に掛かる白い看板に 
一行の言葉が浮かび上がっていた 

「 Be yourself 」 

北風が首すじに沁みる冬の夜は  
コートのポケットに両手を入れて 

仰いだ夜空の丸い月と 
囁きかける星々に 
密かに一言呟いた 

「 Be myself 」 

クリスマスの夜は 
暗闇に光る幼子が生まれた 
遥か昔の産声が 
ほんとうに聞こえて来る気がして 

無数の色が明滅する
ツリーがぼくを呼ぶ
門へと吸い込まれるように 
人気ひとけ無い坂道を
息を切らして 
駆け上がる 

年の瀬の 
冷たい夜に白い吐息を 
昇らせて 








自由詩 クリスマスの夜  Copyright 服部 剛 2007-12-25 20:02:03
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