鉄塔にて
石畑由紀子

 
(鍵盤が駆け上がる夜、/ガラス片、/鉄塔/に続く紅の、足跡、//)


裏側はどうなってるかわかりません そんな理由じゃ嫌わぬ 月よ



差しだすとき、グラスの中身は原液です。やさしくなくてごめんね、いのち、

 
(回転は加速度つけて 肉体か? 残像なのか? 焦げる匂いと、)


かなしみのふたつの肉がこだまする 刺さった悲鳴はどちらのものか



真夜中に君の名前を詰まらせて決壊 みぞおち震度6強








爪を切り、爪を伸ばして、爪を切り、爪が伸びゆく、嗚呼、嗚呼、嗚呼、、



酸素になって森を焼く夢を見ました 苦しいほどに意味にな/り、たい、れ、ない、?







三日月の鋭利でさえも満月の一部なのです 愛しきやいば

 
『阿部定にばっか狂気を当てるけど、笑ってられる吉もイッてね?』


親指に力をこめて我の首絞めあげる手に笑みで応える








なぜ 朝は迷わず迎えにくるのでしょう ふたつの嗚咽で作った道を 







ねえ、風よ、標識をズラして、おねがい、きっと正しく間違える、から、



愛おしき狂気に奪わる夢を見た 行こう 慟哭と 狩猟の血潮よ



聞こえない、見えないものも愛しました。ヘレン・ケラーになりたい。「waaa------ter---r---rrrrr--------------!!!!」







けたたましい靴音響く鉄塔の頂にて、満月と、待つ。------------------------ 君へ
 
( 、したためた手紙を日夜懐にしのばせる我甘き、狂い人)





短歌 鉄塔にて Copyright 石畑由紀子 2007-12-25 18:22:51
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