ひとつの手紙
霜天
ゆっくりと朝になっていく一日に
決まったかたちの挨拶を投げ掛けて
次第に集まってくる思考を
開きかけの目で確認する
机の上には
いつからか書きかけの手紙があって
便箋は空を薄くした色
封筒は飾りの無い白
黒い文字が流れて
そのまま
かちこちと時計は鳴り止まない
手紙に添えた気持ちはくすぶって
かちこちと刻まれている
私のどこかが
長針の速さで
今も鳴り止まない
朝が開いて
今日になっていく
集まった思考で置き去りの便箋を眺めて
もう今は意味のない文字の流れを
流してみようか なんて
ひとつの手紙
私から私へ
時計は今もどこかで
ゆっくりと止まりません