城之崎二手次郎

 厳しい借金の取立てに耐え切れなくなった男は死ぬことにした。崖の上で靴をそろえる。ふと右手を見ると、同じように靴をそろえている男がいた。目が合った瞬間、ふたりは理解した。つらかったですね。それももう終わりますね。視線で言葉を交わした。ほぼ同時に暗い海を見下ろす。そして再び見つめ合う。行きますか。楽になりましょう。微笑みあって体を傾けた。ふたりは落下しながら同じことを思った。相手が女だったらなぁ。

あとがき。
二〇〇字物語第十六弾。


散文(批評随筆小説等)Copyright 城之崎二手次郎 2004-06-18 15:02:32
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