幸せが飽和してゆく
ウデラコウ

あの日の君は それはたいそう 笑顔で
真冬だというのに
黒いシャツ1枚で立っていた

いや〜 寒いですね よく考えたら12月でしたね

って へらへら笑って言うから そのときわたしは
この人は絶対に アホだと 確信した

あれから 何度か季節が変わって 一巡りして
去年編んであげた黒いマフラーを大事そうに使う横で
わたしは それに合う 黒い帽子を編んでいる

たぶんきっと 今年も クリスマスには間に合わない
それでも 君は にこやかにわらって

僕が 一足早くプレゼントを渡したから
君は 一足遅れてプレゼントをくれるのでいいじゃないかと

言うのだろう

あれから 何度か喧嘩をして 何度か泣き疲れて 
あれから 数え切れないほど 愛して 愛されて
たくさんの 新しいものと 出会った

ゆっくりと でも確かに それは満ちて
君の その白い指が わたしの線をなぞるたびに
静かに 爆ぜては また空へ上っていく

それは まぎれもない しあわせという かたち
唯一この世で君だけが 作り出せる かたち

わたしは その姿に 陶酔しながら
静かに 幸せが 飽和してゆく音を聴いていた



自由詩 幸せが飽和してゆく Copyright ウデラコウ 2007-12-22 11:18:04
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