きらくのはじまり
小原あき

「気楽」を抱き締めた
精一杯に、一生懸命に
「矛盾」が貼りついてきたので
えいや、と払い落としてごみ袋に入れる
これはもえるごみだろうか、と
湿った「疑い」が落ちてきたので
とりあえず床を拭いた
思いがけず綺麗になった床を
「満足」を噛みながら眺める
空気を入れて膨らませたら
どこまでも膨らんだ
もしかしたら、空を飛べるかもしれない、と
風船の中は「期待」だらけになり
屋根をあっという間にぶち抜いた
高いところまで来て
「期待」が「不安」に変わりはじめた
風船は萎んで
あっという間に地面に転んだ
「幸い」がクッションになって
命長らえた「喜び」を大事に埋めた
見知らぬ誰かに
こいつの花を贈ろう、と
「優しさ」を見つけた
と思ったけれど
偽物に姿を変えたので
「落胆」を飲み込んでしまった
吐き出そうにも上手くいかないので
「悲しみ」が背中に乗ってきた
体を屈めるしかなくなった
なるべく丸くなっていると
胎児に戻ったみたいに
「眠気」が周りに漂っていた
目が覚めると
一通りの思いが抜け出した、ような
「気楽」を抱き締めた








自由詩 きらくのはじまり Copyright 小原あき 2007-12-18 19:15:16
notebook Home 戻る  過去 未来