たべる
小原あき

明日のための『今』を食べる
『今』を吸収した体は少し古くなり始める
古くなる体を抱えて、明日の続きに怯えたり、期待する
明日の続きは死へと確実に繋がっている
一つの歯車が錆始める
きゅるきゅる、と音を立てる体
油の行方を知らない
生まれたての頃は油が黄金で
飴みたいに甘かった



きゅるきゅる、と音を立てる
音楽をひとつ作り出す
『命の行進曲』
作曲、わたし
演奏、わたし



生まれたてを抱き締めて
こっそり油を頂戴する
明日の続きは怯えより、期待が強くなる
生まれたての頃に見た
祖父のありがとうを思い出す



『今』を今食べる
失いやすいさり気なさで存在するから
逃さないように慎重に
丁寧に『今』を今食べる
あとどのくらい
『今』を食べることが
許されるだろうか







自由詩 たべる Copyright 小原あき 2007-12-05 14:00:02
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