ぽちたま
恋月 ぴの

わんと鳴いたから
「ぼち」

わたしのこと
ほんとは誰も知らないはずなのに
「おはよう」
だなんて声かけて
頭をなでなでしたりする

とげぬき地蔵じゃないんだってば

雪が降ってきたからって
庭なんか駆け回ったりしないし
そのうちあたまツルツルになっちゃうよ

にゃあと鳴いたから
「たま」

冬の日差しがまぶしいだけなのに
しかめっ面が哲学的だなんて
遠くからわたしのこと眺めてる

右前足をひょいとあげているのは
そんな気分になっただけ

そうそう樅の木がちくちくしてるのは
魔よけのためらしい
天井まで届きそうなツリーの下で
まったりと寝そべっているのが好きなのかも

ねえ、もっと近くに寄って欲しいよ
下顎のあたりがかゆいんだから
優しくかいてくれるかな

「名は体を表す」
確かにそうなのかなって思ってみたりする
しっぽが丸まっていれば
やっぱし「ぽち」って感じだし
陽だまりで背伸びしてたら
それは「たま」に違い無いかもってこと

お手軽だって良いなあと思うよ

ひとり暮しのあなたの部屋に
小さくてもかまわないからツリーを飾って
台所の鍋がコトコトあったかそうで
「ぽち」って呼んだら
「わん」と鳴いて
「たま」って呼んでくれたなら
「にゃあ」って鳴いてあげるから







自由詩 ぽちたま Copyright 恋月 ぴの 2007-12-16 17:41:02
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