裏川
渡邉建志

 
なやみにみちてねむりに落ちる
まどろみながら足は窓へ向かう
外を見下ろすと今まで知らなかった河が流れていて
月の光子を静かに回す
いろいろなものが流れていく
光が流れていく音楽が流れていく
僕の悲しみが、過去が未来が流れていく!

私は黙ってその流れを見つめている
ただ私は今だけで悲しい
私はこの新しい街へ出ることは出来ない
ただ私はこの窓から見える河の一部分だけを
覚えているだろう

明日になれば
そこはまた、裏庭になる



君が川の中を歩いていく

白い窓から射す光が君の目に溶けて消えていく
青い空を透かして見た緑の樹は今はもうないんだよ

沈んでいく、沈んでいく



幼い時流れていた川は
君の家の前
笹舟は未来へと
競争していったよね

君は成人になって
いま君の目に映る川は
悲しみを乗せて水車を回し
ゆっくり過去へと流れていくね

 


未詩・独白 裏川 Copyright 渡邉建志 2004-06-17 00:09:55
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