日時計
umineko

母は
今も悔やんでいる
父が逝き
毎日
毎日
こんなにも悲しいのに

泣けないのはなぜだろう、


私もそうだ
父の
いるべきそのあたり

ふすまを背にした
低い食卓
あるいは
硯の置かれた
坐机

いなくなる
ということと

忘れ去る
ということは

こんなに違うものなんだ

私は
恋を失って
途方に暮れた日があった

だが
父の不在はそれとは違う

もういない
もう逢えない
だが
空虚とは違う

悲しいのに
それは自然で
涙には値しない

いつか
私を見送って
誰かが涙を流すだろうか

ううん
小さく首を振る

柱時計が
ぼおん、と鳴って

どこかで
猫があくびして

母が誰かと話をしている
誰もいない
その角度に

私は
生きていく意味を
誰かに問うてみたくなる
 
 
 


自由詩 日時計 Copyright umineko 2007-12-13 23:13:38
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