流れて
あとら


青空の下、作品が並べられている
授賞式に集まった名優たち、やはり洋モノにはかなわない
何種類もの香りに鼻がおかしくなりそうだ

彼の作品が並べられている
彼は空の青さに気づかない

陽のあたる部屋で、灯を消して贈られる
日の暮れた室内で、火を付けて贈られる

作品は彼の手を離れていく

何も知らない
何も見えない

彼の作品は多くの人に笑顔を贈る、でも彼はその笑顔を知らない

今日も材料を量り機械に入れスイッチを入れる
流れていく作品をじっくり吟味しながら、いつかの夢を思い出していた

青い空はどこへ、今は遠く

すべての灯を消し、すれ違う人たちに笑顔を送る彼は
いつもと違う道を帰っていく、残された香りは彼のものでは無かった


今日も空は青い、そこに彼はいない





自由詩 流れて Copyright あとら 2004-06-16 20:09:28
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