パイ
木屋 亞万



パイを焼き上げた
外はこんがりたぬきいろ
中は湿ったきつねいろ
眺めて味を想像する時
食べてる時より良い顔
眼には優しさの炎
口元は甘い微笑み
恍惚に濡れた午後
煙を立てないオーブンの
ストレスを吐き出した曇り空
君は遅めの昼休み
屋上なんかでもくもくと
雲に煙を混ぜてる頃か
紅茶のポットの湯気に
福音を聴いたような気がして
冬に染まった液体を注ぐ
時間をかけて完成した
こうばしい表面に目をやり
淡白なカップを傾ける
君だって休憩終わりのコーヒーを
仕事へ戻るきっかけにして
経済的に働き続けているのだろう
疲れた身体を刺激しすぎて
骨組みが壊れないように
家では硬直した心を解こう
甘く重なるパイを焼いて
帰りを待ってるから
少しくらいしんなりして
でもその方が
良いに決まってる


自由詩 パイ Copyright 木屋 亞万 2007-12-11 23:06:18
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