むらさき
木立 悟
土を醒ます波があり
音は音のかたちを追う
水紋 はざま
ひとつ咲く花
ふつふつと赦され
指でたどりつづけている
四方が水の
鈍
(
にび
)
の径
そこに無い重さが
手首を廻る
熱とゆらぎの
軋轢を描く
水滴の淵
野火の空
煌々と
音を失くす
虚ろ舟
紙の舟
切り取られゆく風景を
乗せては緑に燃える舟
何も押しのけることなく
そこに在る重さ
金つむぐ指
糸の夢
やわらかなへだたり
離れては廻る
着くことなく巡る
応え発つ場所
唇紋
(
しもん
)
のように
消えてゆく花 残る花
抄い 抄われる
手のひらの底
咲くたびに遠のくむらさきに
ただひとつの水の音
一度きりの波の影
触れることなく 触れてゆく
自由詩
むらさき
Copyright
木立 悟
2007-12-11 15:36:58