処女雪
森さかな

 
 
 
 
二人の住む街は
汚れた雪しか降らないから
きみはそれしか
知らないでいる
 
街灯の光は
ぼくたちの知らない間に
静かに青白くなっていって
だからこんなにさびしいんだ
 
 
 
 
 
冬は怖い
冬は怖いよ
 
ぜんぶぜんぶ
眠りにつくんだ
 
 
きみは冷えてしまった
 
こころだって捨てたがる
指先だって捨てたがるから
 
 
ぼくは
 
ひとみを閉じてやりすごした
終わりがくると信じてた
 
 
 
 
 
灰色の道端で
きみが
消えたいとつぶやいたら
白い息になって
 
それをぼくは掴もうと腕をのばしたのに、
こぼれてしまう
 
 
 
 
 
きみは無垢な体が冷えないように抱きしめたね
それでも風は吹いたよ
白いかなしみすら
 
奪いとったよ
 
 
 
 
 
いつか、ここから逃げるだろうか
わからない
 
 
 
 
壁に囲まれたどこかで
猫が鳴いた
それは反響しながら
消えるから悼むこともできずに
 
 
 
 
冬の街を冴え冴えと月がみてる
 
 
 
寒い
 
 


自由詩 処女雪 Copyright 森さかな 2007-12-10 20:21:16
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