『スイッチ』
東雲 李葉

暗い部屋が淋しくてスイッチ入れれば、光は溢れるし音は流れる。
ボタン1つで沢山のコトが出来るようになったね。
便利な時代なんだと子供の僕でも分かるけど、
失うモノの多さに比べたら小さすぎる進歩だね。
電源切っても悲しみは消えないし、高画質の画面でも君の想いは見えやしない。
電波を飛ばす関係でどれくらいの人が繋がっているんだろう?
僕の場合、きっと誰ともリンク出来ていない。
結局僕らは淋しいだけじゃないのかな?
どこでも聴ける音楽も、いつでも交信出来る通信機も。
四六時中誰かと関わって単調な淋しさ誤魔化したいんだろう。
なんだか人間は随分弱い生き物みたい。
誰かが居なくちゃ淋しいだなんて。
その繋がりがどんどん淡白になっているというのに!
君に送った無機質なお手紙。何故だか捨てるのが怖いんだ。
僕の小さな頭にはメモリー機能なんて付いていないから、
いつか記憶が霞んだとき、君という存在を証明出来なさそう。
保護ボタン100回押して。
無くならないように無くならないように。
大切なのは君とメールとどっちだっけ…?
届かない想いが事務的な方法で届くのはなんだか面白いと思わない?
それは例えば「話がしたい!」なんて想いを声に出さずに言うのに似ている。
便利すぎてやるコト少ない世の中だけど、
スイッチ1つで動く世界はいつもどこか危なっかしい。
どっかで誰かが間違えたらきっと簡単に壊れてしまう。
なんだか、僕にはかえって複雑だ。

誰か発明しないかな。
ホントの自分を起動させるスイッチ。

早く誰か発明してよ。
電子の世界を作り変えるとっても便利な赤いスイッチ。


自由詩 『スイッチ』 Copyright 東雲 李葉 2007-12-09 02:58:19
notebook Home 戻る