音姫
壺内モモ子

音姫さまに、はじめてお会いしたのは
小学校の修学旅行で東京に行った日のこと

なんのために、そこにいらっしゃったのかわからなかったが
音姫さまは、水の流れる音をお出しになるそうなので
さっそく聞かせていただくことにした

きっと川のせせらぎや、波の音のような
美しい音にちがいないと思ってた
が、音姫さまは

ごーごぼごぼごぼごー
じゃー

と大きな音をお出しになった

まるで壊れたオルゴールのよう
私の中で音姫さまが壊れていく
想像していた長い髪も、安らかなお顔もありゃしない
そりゃそうだ
音姫さまは、ただの擬音装置だもの

ごーごぼごぼごぼごー
じゃー

ショックで
本物の水を流すのを忘れた
いや流したかもしれないけれど
音姫さまがお出しになった音なのかもしれない

ああ音姫さま


自由詩 音姫 Copyright 壺内モモ子 2007-12-05 23:58:14
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