たまご
水町綜助
たまご
雨の日に
雲の、目をみはる
ながれの速さに
あかされる
ミルクの皮膜を
くすりゆびに
掛けて
あたたかいのは
どうして
どのように
熱せられたのか
たどれば
鉛筆のさきで
殻を割って
覗く
「悠久、」とか
呟きたくなる
見渡すかぎり
穂波
なんて風
冬へと
冬へとさしかかる
線上に架けられた
匂い
鼻の奥が
つめたい
という
お誂え向きな
吹きかたです
金糸の
ざわざわと
目に痛い
胸騒ぎの
あ、
と
お。
という
赤色を思う
音で
ぬり込められた
僕の
好きな
(くれよんの)
青い
空
切り開いて
切り分けて
ひらいて
こまぎれれば
体の中を流れる
色
だったわけだ
血、なんていう
なんていう
青
そして赤
丘の上を
ころがす
たまご
ころがる
なだらかな
斜面を
まずは
金曜と
と、透明
殻座も
ち切れちまった、し
やくカ?
やかないカ?
と丁が訊くので
焼かない、と
僕は答える
中華屋のテーブルにつっぷして
のびすぎた前髪の隙間から
夢の話をし始める
「 焼かない
真綿のような
羽毛がつくられるまで
殻の中の翼その先端が
嘘くさいほど
精緻に
わかたれるまで
胡椒粒を噛み砕くように
呟く
殻
白
羽毛
ミルク
瞳
黒
血液は
赤
赤は
歴史を
沢山の
ヨコ線を
溶かす赤
呼吸に
沸く赤
青い温度の
あたたかい
血
ぼくを
ちぎって
撒けば
じぐざぐに
割れる殻(笑)
ころがり落ちる
たまごが
ぼくのユーモアなら
この天津飯は
さしずめ
ぼくの苦笑だ
そして空は夢
穂波は恋人で
飲み物は血だ
だがこれは紹興酒で
ぼくはあまりすきじゃない 」
夜が
ふけてゆく
その
以前は夕
以後は朝
その隙間に
昼があり
ぼくの
たまごは
そのすこし下った先にある