放る
九谷夏紀



 少しでもいいから綴っていこうと思う
 一日10分でもいい、一文でも
 誰に気兼ねするもことない ひとりあそび
 試している
 私の内臓を放ってみている
 楽である
 内臓を気に病む事がなくなった、つまり悩み事が減ったのだと、言えるはずだ
 私の体はからっぽで脳だけがぐるぐるしている
 私の内臓を放って
 このままからっぽのまま、ずっと生きていけるんだろうか
 放ったものの代わりには何かが生まれてくるんだろうか
 放ったもののことは忘れてすこやかに暮らせるんだろうか
 放ったものをいつかいとおしく取り戻しに行くという予感は愚かさからか希望からか
 内臓を放って脳の支配下に置く事を明確に止めてみている
 間に合わなくなったり別の問題が出てきたりするのも判断基準として
 試している
 ぎりぎりまで行ったら何が見える
 どうにもならない ここよりも 
 じゅうぶんに留まったら動いて
 動くたびにがらんがらんと響く音が心地よい、いまは
 ふと覚えず涙が溢れ
 ふと覚えずけろりと眠る
 この場所が見渡せるところまで行ってみる
 進行方向に背を向けて遠ざかる景色を見ている
  

 


自由詩 放る Copyright 九谷夏紀 2007-12-01 20:13:56
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