カマドウマ
音阿弥花三郎

(キリギリスやコオロギに似るが、成虫でも翅をもたず専ら長い後脚で跳躍する。その跳躍力は非常に強く、飼育器の壁などに自ら激突死してしまうほどである。「Wikipedia」)


カマドウマは笑う バスルームに人はいない
カマドウマは糞をする バスルームに水音が響く
カマドウマは眠り、目を覚まし呟く
わたしは哲学者だ と

キッチンの片隅のカマドウマは妊娠している
胎に溜まった大量の卵が
カマドウマを幾分苛々させている
どうしてもジャンプが右へ逸れるからだ

深夜、私はこっそりとあいつらの様子を窺うのだ
あいつらほど私に無防備なやつはいない
バスルームで不可避のジャムプを行う

バスルームでキッチンで高笑いしながら
廊下でドアの前で、そして寝室でベッドに登り
触覚を振り乱し、私に好意の眼差しで飛び掛る


自由詩 カマドウマ Copyright 音阿弥花三郎 2007-11-23 02:01:27
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