Wednesday(In the Milky Way of the imitation)
たちばなまこと
Wednesday
規則正しく星が灯る
首都高では夜が始まる
助手席 たばこをふかす父親
知らない光景をあげる
教えてもらった光景たちには
かないそうにないけれど
シュマリナイ湖のキャンプ場で
コガネの砂浜で
ノボリベツの波打ち際で
リアルは漆黒にまたたいていたよね
銀のオーパはイミテーションの星の河の中を
恐れや不安を抱き込みながら
ぬれた水晶玉たちを乗せて
エアポートへの風になる
今夜のタワーは青だよ
彼が見せた青なんだろうね
せんちめんたる だね
虹の橋も夜の色に浮かぶ
去年の夏 助手席には彼の声
熱せられたスワロフスキーたちが オーパを呼んだ
東京を反対側から見るなんて! って彼は
祝福をめいっぱい浴びた声でね
Wednesday
助手席 たばこをふかす母親
渋滞のハザード テールランプの海
虹の橋もサーモンピンクに浸されて
遠くのビルには オレンジのプリントがされて
燃え沈む太陽を指さして
夜よりも美しいと言う 母は娘に似た目をして
77便の行き先ではもう雪が
行き先では愛する夫と子どもたちが
コートを巻いて待っている
私たちの星の子は
ゲートに消えた母親に似た姿を
追いかけ損ねて泣いた
彼の母は 寂しさに引き戻されて泣いた
それでもまた夜は始まっていて
銀のオーパの行き先は
イミテーションの星の河を下った
彼が愛したリアルな河のほとり
さよならの象徴だったエアポート
雨の日曜日 視線に溺れた観覧車
一度だけ行った病院
何度も行った病院
病室から見下ろしたゆりかもめ
赤い眼を数えた摩天楼のホテル
仲間と唄い合った新宿の真ん中
高速で過ぎゆく光景を
新しいコートに縫いつけながら
目の奥の痛みの行き先を
教えて欲しいと
呟いて