奇妙奇天烈弁財天
北大路京介

汝は 奇妙奇天烈弁財天
ぼんやりとしたペンキの匂い
なんといふ艶めかしい六弦
醒めた家畜の奴隷なり

薔薇のちひさな頭脳を投げよう
あぢさゐの憂鬱な吸入闇
およぐ森 停止の供給
遊園ちゅっぱちゃぷす
独りさぶうえい

けふも爪の奥から種が生え
霜夜の懺悔がせまっきて
ういるすが謳う

焼石の亡霊よ
愉快な建築と皮膚の電波
顔なき顔の円舞曲
卵や梅の月影を観た

汝は 奇妙奇天烈弁財天
こんくりいとが鬼ネコヤナギ

廃屋の誇りが太陽を照らす
やはらかい閑寂な雨のやうだ
悲しい小鳥の過去に坐って
かぎりなく性の飛翔が笑ってゐる
しなやかに扉を見つづけた

汝は 奇妙奇天烈弁財天
だいなまいとが鬼ネコヤナギ

断崖の肋あふれたり
たちまち絶望の蓮華
やさしく自転車の情緒
硝子鮫の動揺
波浪の祈密
眠れるなり


汝は 奇妙奇天烈弁財天
しづかに青白い夜をふるわしてゐる

汝は 奇妙奇天烈弁財天
しづかに夜をふるわしてゐる


自由詩 奇妙奇天烈弁財天 Copyright 北大路京介 2007-11-22 01:27:18
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