メイデンの猫
かるび

私はシュレーディンガーの猫でなければ
チェシャ猫でもなく
百万回生きたりもしない

私は貴方の前から消えたりなど絶対にしない

嬉々として鈴を手渡そう
だが貴方の優しく触れたそれに
時々酷く嫉妬して捨ててしまうのを
許してくれないか

おや

何処へ行くのですか?
扉の外は地獄ですよ?
蟻の軍隊が戦争中です
もうすぐ酸の雨が降り
美しい貴方は視線に刺されて死んでしまう

だから

私は英国人の様な嘘が吐ける
私は彼と同じ様な嘘が吐ける
唯一の真実の為に嘘が吐ける

貴方の好きな言葉をお祈りにして
貴方の好きな言葉を子守唄にして
おやすみなさいをしよう

おやすみなさい

貴方が遊び眠れる様に
本物の扉を作り
偽物の鍵を掛け
子供部屋に夢の窓を付けるから

おやすみなさい

私はシュレーディンガーの猫でなければ
チェシャ猫でもなく
百万回生きたりもしない

私はメイデンの猫

私の目と耳と爪と牙と髭を

引き裂いて欲しい




自由詩 メイデンの猫 Copyright かるび 2007-11-21 20:18:04
notebook Home 戻る