逆流癖
A道化



角膜の表面にて
夏の日は湿った瞬きだらけになり
結局はわたし目蓋でその色彩を瞑り流します
そう、悲しい映写幕として
角膜は常時日陰です


鼓膜の表面にて
夏の波動は痒みに酷似して
結局はわたし指でその音をかき出します
そう、要らない窪みとして
鼓膜は常時孤独です


それでも生きろと
理科室から聞こえます
あらゆる色彩が・あらゆる音が・あらゆるわたしが文字化けしても
それでも、生きろと
嗚呼
ひとりでは立てない木を生かす手立てが理科室には在って
ひとりでは立てない木を生かす手立てが理科室には在って
けれどその意味がわからないんです、だから
文字化けしたわたしを解読してそっと意味を教えて欲しくて
わたし顕微鏡を見上げるのに・知りたいのに、その一方で


みぞおちの果肉内にて
飲み込んだ夏が炎症を起こし
結局はわたし豊かだったそれを逆流させます
後ろめたいわたしのみぞおちの果肉ごと
結局はわたし、わたしを逆流させます



2004.6.11.


自由詩 逆流癖 Copyright A道化 2004-06-13 06:45:20
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