よく、ね。だから
紫苑

よく、手に力が入らなくなる

握り締めようとしても指は緩く曲がるだけ
なあにも出来ないので
しばらく意味も無く手のひらを眺める

こいつは何かに怖気付いてでもいるのだろうか
意図的な反抗期とかだったら困るな
大体、神経経路じゃないと動かないってところが
端から喧嘩売ってるように思えてきた

もしかしたら
このまま動かなくなったりして
それ以前に握り方を忘れたりして
神経云々の話じゃない
そしたら君の手が握れないじゃないか
もう一度と、決めていたのに

君の手まで忘れたらどうしようか

冬で手袋もしないでいたのに
冷え切った僕の手とは対照的に
不思議と温かかったこととか
あわせてみたら実は君の手の方が
大きかったこととか
握ったままだと歩きにくくて
君がいつもより隣にいたこととか

そんな初恋のベタな感想みたいな感覚すら
忘れてしまったら

行き詰った回路を授業終了のベルが分断する
気が付けば動く手に安堵しながら
今度はちゃんと売られたもんは買おうと決める
消される前にとノートを取り
特に何もない予定を思い出す

取り合えず
今週末あたり君に会いに行こう


未詩・独白 よく、ね。だから Copyright 紫苑 2007-11-20 21:56:30
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