五月末日 -長崎-
紀ノ川つかさ

微笑みつ口から滴る灰色の雨だれのごとき友の嘲り
裏切りは雷鳴のごとく轟きて稲光のもとさらけだされし
裏切りをもたらす雲は見えずとも友の柔肌裂けば青空
目の前の笑顔の向こうにちらつくは画面に踊りし呪いの言葉
吾の刃は友を切らざる裏切りという言葉のみを切りに向かいし
世の中を嘆く涙を降らさんと喉を掻き切り赤き血しぶき
カッターの輝ける刃に映り込む空の青さが私の心
きれいごと並べ世の中渡り行く大人と大人になりかけを消せ
血の気無きカッターの刃はまばゆくて五月末日最後の太陽
心荒れ言葉奪われし乙女のため声を降らせよ村山槐多



短歌 五月末日 -長崎- Copyright 紀ノ川つかさ 2004-06-12 20:36:30
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