オリオン
石畑由紀子


夕刻
街に初雪が舞いました、そして23時の空には
輝くオリオン
long time no see!

数年前
雪に覆われて色をうしなった冬の真ん中で
バスでのうたた寝が災いし
予期せず見知らぬ夜の住宅街に放り出されました
人は誰も歩いておらず
住所もわからないのでタクシーも呼べず
方角すらつかめず
(住宅の窓の方向を確認する精神的余裕はなかった)
嗚呼、遭難なり、
と放心してあおぎ見た空

輝いていたオリオン
を頼りに長時間かけて自宅まで帰ったことがあります
冗談のような本当の話


人生の
わりと重要な局面にあるとき
に限って寝ちゃってる人
というのは必ずいて
今日も彼はそれをしでかしてしまう
残念
そうやって
すこしずつ失いつづけるんだ



オリフィスのベルトをきゅっ、としめて
寒空のしたを歩く
またたく間に
さらさら
こぼれおちてしまわないように

オリオン
すぐ下の直角三角形はうさぎ座の胴体
右側の鋭角
から伸びるふたつの耳が見えるときは
空が澄んでいるという合図です


オリオン
導かなくていい
そこで輝いていてくれれば
私は自然と気づくから
歩くのは私だ
私にとっての正しさを
私は
ひとり
いつもそうやって歩いてきた

あとは

空が
晴れていますように
見上げるとき、空が
どうか澄んでいますように

オリオン、






自由詩 オリオン Copyright 石畑由紀子 2007-11-19 00:26:04
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