オリオン
石畑由紀子
夕刻
街に初雪が舞いました、そして23時の空には
輝くオリオン
long time no see!
数年前
雪に覆われて色をうしなった冬の真ん中で
バスでのうたた寝が災いし
予期せず見知らぬ夜の住宅街に放り出されました
人は誰も歩いておらず
住所もわからないのでタクシーも呼べず
方角すらつかめず
(住宅の窓の方向を確認する精神的余裕はなかった)
嗚呼、遭難なり、
と放心してあおぎ見た空
に
輝いていたオリオン
を頼りに長時間かけて自宅まで帰ったことがあります
冗談のような本当の話
人生の
わりと重要な局面にあるとき
に限って寝ちゃってる人
というのは必ずいて
今日も彼はそれをしでかしてしまう
残念
そうやって
すこしずつ失いつづけるんだ
ね
オリフィスのベルトをきゅっ、としめて
寒空のしたを歩く
またたく間に
さらさら
こぼれおちてしまわないように
オリオン
すぐ下の直角三角形はうさぎ座の胴体
右側の鋭角
から伸びるふたつの耳が見えるときは
空が澄んでいるという合図です
オリオン
導かなくていい
そこで輝いていてくれれば
私は自然と気づくから
歩くのは私だ
私にとっての正しさを
私は
ひとり
いつもそうやって歩いてきた
あとは
空が
晴れていますように
見上げるとき、空が
どうか澄んでいますように
オリオン、