高層ビルの派遣社員
狩心

夕陽の色
果実の匂い
合成化合物のワックス
ピカピカに磨き上げられた窓に
時代を反射する
七色の油
骨と骨の接続部から
体液と見られる潤滑油が採取される
清潔に加工
真空パックで無味無臭
水面から顔を遠ざけて
心と体を遠心分離機にかける
光の季節
誰もが駅のホームで腐敗した
果実の生ジュースが飲める
何色に染めようかカメレオン
木にぶら下がったまま
逆さ吊りのコウモリ
首を締めながら
アウトロー気取ってやがる
イマジネイション
透明の蝶
ヒラヒラと舞って
灰の中に芽吹く火山の花
マンモスが氷山から目覚めた
高層ビルで圧縮された命が
クリスマスのイルミネーションを赤く染めた
全ての窓が
少女の叫び声で割れる
ガシャン
何かが印刷された音
ガチャリと鍵が閉まる音
自動的にカメラのシャッターが切られる
愛するものを
時間のない世界に追放した
過去と未来の天秤が吊り合わないように
片足が爆撃された音
玩具の飛行機が足元を低空飛行
容赦なく足首は蜂の巣にされて
ぐらぐらと揺れる体
リズムを刻み始め
体制が崩れる
メiデiア
誤解の窓から自分を投げ捨てろ
地面に着地した時に聞こえる
背中に埋め込まれたキーボードが割れる音
少女の叫び声と並列して
二次関数が弾き出す言葉と比例
震える書き文字の隙間を
滑空する渡り鳥の墜落と堕落
それと平行して
蒸気で上昇する地球儀の気球
青空を散りばめた文明の力で
夢を持たない非行少年が
いとも簡単に飛行した
メiデiア
脈打つ明確な裁判に
判決を委ねるな
大国の大義名分の前で
呆然と立ち尽くす陪審員達が
証拠不十分のまま勃起して
死後硬直のダンス
そのパフォーマンスに無数の賽銭が投げられる
七色の油
神社にお参りに行く気持ちで
テレビ中継が途切れ途切れに挿入される
願いが叶った試しはない
揺れる絵本
揺れる体
空想と現実がリンクして
肩と肩がぶつかる
黄色人種の空間に亀裂が走り
現れる暗黒に座礁する
亡霊船の影
岩肌に照り付ける
ストロボライトの中で
亡霊たちが何か呟いているが
定期的に巡回する玩具の機械が
猿みたいにシンバルを叩き続けて
全ての音を掻き消してしまう
その無音を売り捌く新入社員の小さな吐息が
余命幾許かの子供達の言葉を忘れさせた
遊覧船の結末
騙されたままで
真実を知らない
メiデiア
故郷から遠く離れた小島から
電気屋と薬屋の眩しい光の中で麻痺
または消毒されて剥がれ落ちる皮膚
掻き毟る肌
何も張り付いちゃいない
俺たちは裸のままだ
何も持たされないままで
巨大昆虫が犇く戦場に派遣される
未来から送り込まれた
運命を変える兵士?
ちょうど呼吸器がある首筋の所を
同じサイズに真横にスライスされて
手作業で一人ずつミンチになると
先進国の人々が喜ぶよ
群青色に染まる
ハンバーガーの具材として輸出
パンとパンに挟まれたまま
動かないカメラ
誰の心にも届かない骨は
深い谷に投げ捨てられる
冷たく静かな砂漠の谷が
白く硬い骨で埋め尽くされたら
向こう側へ渡ろう
きっともっと高い高層ビルから
新人の派遣社員たちが
羽が生えたと言って
笑いながら飛び降りてくる
車輪のない胴体着陸
地面に広がった衝撃
水面に浮かぶ
七色の油
昨日よりも今日
今日よりも明日という希望が
リアリティの墓場だ

メiデiア
あなたが僕の中で
踊り続けている
一体何の為に?
抵抗する着色料も
その目的を持たない
痰がゆっくりと
煙草の先端に絡みつく
次の煙草を吸う時
それは私の指だ
あと五本で指が無くなる
あと五分で震えが止まらなくなる
この肺は呼吸の仕方を忘れた
音楽が足りない
骨と骨の接続部から
体液と見られる潤滑油が採取される
七色の油


自由詩 高層ビルの派遣社員 Copyright 狩心 2007-11-17 16:10:41
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