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渡邉建志

 
絶語集


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ぼくは恋をするだろう
とは思わない

がたーん、がたーん、君の根が揺れる
なんでもないような朝に
溜め息のような雪が降って
ひとびとのなみだをさそう
こまめな誘惑が崖を上っていく朝だ





  昨日針を転がしていた、坂を
  目をつぶって、針は

  転がっていった

  あの盆地のなか、閉じ込められた空いっぱいにあなたの
  あなたのひとみがわたしの心を
  見るらし


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僕はいわばどうしようもない混濁した世界の中を
それでもなんとか昏倒せずに生きてゆくのです。
現実を その今生きている現実を
どうしようもなく直面している
生活を
感情を
世界を
言葉遊びではない 火遊びで
どうしようもなくぶちまけながら。


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暗い森に雨が降っている
その暗闇の中に微かに見える古い修道院
のピアノが鳴っている

修道院の屋根は朽ちており
光と雨が屋根から滴り落ちる

ピアノが鳴っている
誰かが弾いているのだ
濡れながら
かぜをひきながら


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僕は坂を走り降りながら、夕焼けを空に監禁する。
感傷は死ぬ前に一度感じれば、それでいい。
僕は空の一片を掠め取る。


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誰もいない夕暮れの長椅子で横になっていると空を飛んだような気持ちになるんだ
って君が囁いたその声が僕の中を金色の龍みたいに滑っていくから
僕は君のきれいな耳元を少し貸してもらってああ世界は美しいなって囁き返したんだ


04/12/16


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遠い喀血、外は雨。
海は見えない。
熱い、あてどない


憧れ。
晩年の写真
手記





逍遥

山麓を歩いていると
天国がわたしの前に降りてくる
堂々とした連なりを翼のように広げて

落ち葉が大きな輪を描き
谷間を上昇していく
アダージョで



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要するに どうしようもなく 一人なのです

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  悲しいけれど、いろいろ勇気が出ない。
  というか、めんどくさい。
  そうか。めんどくさいのか。
  戦うのが、なにより説明するのが、めんどくさいのだ。

  参った。そして後悔するのか。
  後悔するのにもつかれるのか。

  死ね。 死ね。



みしらぬきみの

あなたの

あたたかさを

 、求めても仕方ないや。
 私自身が満足していないの、ならば。


04/12/09




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[独白]という名の孤独

31  どんどんウルトラマン化するジャネット

2   雑然と薄い色の全体軽快な眺めだ
    橋の下が感覚的に赤+オレンジ

3  「波動拳!」
   「わたしのお小水でも飲むがいいのよ」
   「ごくごく!」
    のどかな湖水風景

7  「んふふ、んふふ」
    紺のジャケット、首のリングの粗さ、みどりの宝石
    ピンクがおしゃれ(顔の輪郭、服と肌の境界)

8  「ぴこぴこ」
   「首ずれてるかね」
   「実はこの首まわります」
   「ぎゅいーん」

17 「さあみんなでパズルをしよう!」

18 「がくふのおんぷになろう!」

36 「ああふられてしまった」
37 「じんせいおしまいだ」
38 「もういいかい?」
39 「私は壁になった!」

16 「私は光るつぼ!花よりも私をみるがいいわ!
    花は私の髪かざりにすぎないのよ!」

30  横たわるrough

(20)「眠いわね」白いソファーに身を沈めて女が言う。
    首をかしげて君は流れて行きそうだ。でも君は絵の中にいる。
    窓には花のヴィジョン。

20 「ふー、きもちええわ」

19  女「むむ あついわね」
    壁「くねくね」

22 「ふふふ」
23 「むーん」
24 「げっそり」

25 「なにさ!」

(21) 本に書いてあるのは
    ひかりいだす窓のこと

14 「キッ」

13 「んーっふふ」

12 「はやくかけよ」

49 「はれはれ」「どんなもんじゃい」

48 「むふふ」

50 「とりゃそりゃ」

51 「うーむ」

58  かみのけも花であるよ
    かたむいたそんざいであるよ

62 「どーん」「くびがうごきません」

45  ブロンド髪に青いずきん
    部屋の中のシャンゼリゼを行く

44 「見よ、これが海だ」

43  海の青を濃縮したような窓の桟だ

46 「うふふ、チラリズム」
   「そっちじゃみえねーよ」

59 「まだ描くの終わんないかな…偉いせんせだから言えないな…
    ま、しかたないか」

57 「きめっ」
   「ふへーん」

53 「こうかくのですよ、わたし。」

64  うでのさんかっけいのなかでゆめをみる
    青いベッドの上で
    青い光のゆめ

65  でもちょっと中国か韓国っぽいよね
    でもちょっとニンジンっぽいよね

67  ふつうのつくえが製作過程において
    ゆめのつくえになっていく
    描きながらモデルの夢に
    入っていくように

    君は腕の空につつまれてねむる

90  牛の目にガソリンが浮いていますね
    エウロペはむしろうれしそうだし

72 「ぐっすり」
   「おきろー!ぷー!」

?(家に住まう沈黙) 部屋に沈黙が訪れたとき

75  金魚は草を伝い階段を伝って
    川へ逃げる

86 「かわいいでしょえへ。」(ってかお父さんの愛を感じるよね!)
    こどもぽいし。

97  マンガみたい。しもぶくれー!

94  室内ジャングルで眠るサザエさん 風景ももわもわ

95          起きたサザエさん 風景もきっぱり

100「ふっふー」 くびがない

91 「えんがちょ」 光速首チョップ

105 ボート上で幽体離脱
    波々してる

102 なんかローマみたい エトルリアの絵みたい メダルみたい
    あつくてなんか いきいきしてる

103 パイナップルも幽体離脱
    おどろいてテーブルクロスの逃げるスピード

78 「いいえわたしはイタリアの女」

80  なんか知的 宗教博士みたい
81  うらのかお ねむくなってきた
82  そとのかお しゃきーん
83  いじけた こどもみたい

108
  1「ひゅー!」
  2「ひゅー!」
  3「じゅすぃ ろわいやる」
  4「ぺけぺけ」
  5「どんどんがらがら」
  6 …
  7「ここまでおいで、どこでもドア」
  8 宇宙をおどる
  9 静かなる瞬間移動
 10 どーどーどどー 
 11 ぱらぱらへにょへにょ
 12 とんだあ
 13 うひー
 14 まてー
 15 おりゃっ(きゃっ)
 16 トイレにとじこめられたわたし
 17 もわもわ
 18 もわもわ
 19 もわもわ
 20 すってんころりん!

106
  1 うーん
  2 わたくしピアノひきますの
  3 いいてんきですわね
  4 ヘックソガキが。
  5 ふーん
  6 ゴージャスっぷり(かんちがい)
  7 はなたかだか!

119 くねくね(時空の最先端としてのペニス)

109 あらゆる世界の鳥たち
    あらゆる葉が舞い
    囲む中で

110 あらゆる世界の魚たち
    あらゆる海藻が舞い
    囲む中で
     (鳥も海を飛び)
      いきかういきもの たちの きおく

111 アクロバットセンサー アクロバットセンター アクロバットダンサー

113 しゃきーん(さわやかみどり)

118 むーん

120 うふふ まるかいてちょん


04/11/04





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[独白]具体に対する恐怖、私の私探し


具体的、に対する恐怖。選択、に対する恐怖。自分のことは自分で責任を取れ、というクリシェ、はクリシェゆえに心に響かぬ。命にかかわれば働かざるを得ない、しかしそこまで墜落するには時間がかかる、そしてさまざまなものを失う、もちろん時間、それから経歴。かといって危機感はない。漠とした不安だけがある。

「私」は私のものではなく、誰かから借りてきたもの、と今までなんとなく思っていたような気がする。私なんかに貸してもらってよかったのだろうかと思う。借りたからにはなにか立派なものにしてあげたいとは思うけれども、どのように立派にしようかということは依頼がないので思いつかない。恋人がいる。借りてきた人のように思う。私は責任が取れない。何にも取れないよ、と思う。私が本当に私のものにならなければ、何にも責任なんて取れるはずがないと思う。

まず私を私のものと認識しなくてはならないと思う。私は神様のものではない。私は世間のものでもない。私は宇宙でたった一人ぼっちで、世界は荒廃していて、ひとりだけ生き残って何をしよう、となったときに初めて私だけのものになるのか。そこまで危機が迫らないといけないか。私は私に責任がない、借りてきた私には責任がない(借りてきた私、など本当は存在しないので)。その認識の上で、私は私に責任を持てるのだろう。話は抽象的になるばかりだ。私探しの宇宙にもぐりこむばかりだ。好きなものはラヴェルとルドンなのだけれど、それさえ借り物かもしれない、どうして私自身が好きだといえるのだろう、それは兄の趣味であり朝日の美術雑誌の趣味であるかもしれないではないか。

借りてきた私ではないのだと思う。私は私が飢え死にしても誰に借りもないのだ。私は私が偉人になれなかったとしても誰に借りもないのだ。えらくなりたいと漠然と考えていた小学生の思考から抜け出ないまま生きてきたが、それは偉い人になるべきだというよくわからない自己暗示を無意識にかけてしまっていたのだが、果たして偉い人になるというのはいったい何に対する借りなのか。大偉人にならなくても小偉人になればいいのだし、小偉人とはおそらく電車で席を譲れる人のことだ。

借りてきた私ではないのだから、失敗しても仕方がない。1回しかない人生だと人が言う。だから悔いなく生きなければいけないという。それはいまは何の指針にもならぬ。それが逆に私を押しつぶしている。こうやって考えている時間が無駄だから動けという。しかし納得しないまま動いてもどこへもたどり着かない。納得できないのはいまもやもやしているからだ。もやもやしたまま何をやったって成功するわけがない。結局はいまの心がけをクリアにしてから動き出さなければいけない。いかにして心がけをクリアにするのか。どちらの方向へ動くのかを決めてしまったら、心がけがクリアになって、動き出せるのか。しかしどちらの方向に動くか決まらないから、心がクリアにならないのではないのか。蛇が自分の尾をかんでいる状態だ。八方塞り。考えられない人になりたい。1ヶ月だけ、考えなしに動く人になって、それから結果を考えたい。動いている間に、決定したときの思考プロセスを思い出したくない。どうせその決定の思考プロセスがクリアになることはありえないのだから。なぜなら思考プロセスがクリアにならないから動けないのであって、無理やり動くということは思考プロセスに無理を強いるということだからだ。記憶をなくしたい。考えられない人になりたい。そういう暗示をかけたい。私は私に対してまず無責任になりたい。私は私にほっといてといいたい。私は年齢とDNAにほっといてといいたい。私は理性にほっといてといいたい。私は「人生一回きり」にほっといてといいたい。私はすべての伝記を読んだ記憶と感動にほっといてといいたい。私はすべての自分の羨望にほっといてといいたい。私は夢という言葉にほっといてといいたい。わーたーシーはーぐーたーいーをーえーらーぶー 具体とは常に詰まらぬものだ。広がりを持たぬものだ。ごめん。5年ぐらいの具体しか考えたくない。でも、今すぐに。僕はもうパンクします。パンクしてしまいます。楽しい生活が描けない。楽しい人生が描けない。楽しい毎日が描けない。それはなぜ。選択があるからだ。選択に対する後悔があるからだ。そして選択に対する失敗に対する気付きがあるからだ。だめだ。楽しそうに生きているモデルケースが描けない。周りにいない。どんな人生も明るく見えない。輝いている人はすべて遠くぼくには実現不可能だ、といわれる。遠いものを、明るすぎるものを、憧れに過ぎないものを、ばかりみているからお前はだめなんだ、と言われる。光が欲しい。光が欲しい。光をくれ。光をくれ。光をくれ。光をくれ。

04/08/21







未詩・独白 zets/go Copyright 渡邉建志 2004-06-12 03:41:56
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