拙写
佐々木妖精

つまりわたしは苦手なのだね

この、人と争うということが

漢字を書くと
はなまるとばつが生まれ

走ると
一着とビリに分かれるということが
途方もなく苦手なのだ

誰かに尻で叩き散らされるのも
誰かを蹴落とすのも


椅子とりゲームは
椅子とり競争で
席を取れ
席を取れと
玉子焼きを食べた人は
叫ばなければならない


席を取れ 席を取れ


そう叫ばなければ
人間は進歩できないらしく
先生も推奨する

わたしはそれが
非常に苦手であるので
玉子焼きを食べたのに
食べてないことにする

席から動かないのがズルならば
地べたに座ることを許してほしい

叫ぶと勘違いをされる
椅子とり競争をやめたい人
そう声にすると
大勢立ち上がって
椅子を奪い合うのです



わたしは
ややものぐさであり
闘争心に欠けるので
たとえば誰かの詩と
自分の詩を比べるようなことが
こわくてできない
比べ始めると
好きなはずの詩が
攻撃を始める


蹴落とせ 蹴落とせ

叩き潰すぞ かたわにするぞ



わたしの夢は
かつて三冠王になることであり
ノーベル賞を受賞することであったが
それが競争の権化であることを知り
なんと難解な罠であったのかと
打ちひしがれ
木曜ゴミの日
ブラウン管へ映し捨てた



ダイナマイトを知らずに作った人は
かわいそうだ



わたしは
誰かを責めたい
という衝動に駆られるのですが
誰も責めることができません



譲り続けると
落下して死ぬらしいので
選ばなければなりません
どこに座り
息をするか


席をとれ  席をとれ

採らなきゃ死ぬぞ  獲らなきゃ死ぬぞ


自由詩 拙写 Copyright 佐々木妖精 2007-11-11 21:25:38
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