アリゲーター
風見鶏

ニューヨークの地下水路にはワニがいて
白い鱗で覆われたそいつは真っ赤な瞳をギラギラさせていつも獲物を待っている
だからニューヨークじゃ死体の処理には困らない
マンホールの蓋を開けてそこに放り込んでしまえば後には何も残らない

もちろんそんなのは性質の悪い噂話で
実際には気温の関係とかでワニは生きられない
ワニって生き物は獰猛なイメージとは裏腹にデリケートで
だから、ちょっとした環境の変化にも耐えられない

ニューヨークのワニはペットを消耗品として扱う人間へのちょっとした戒めとして
華やかな街の下でひっそり息づく恐怖というジョークを込めて
今も人々の間で生き続けている


自由詩 アリゲーター Copyright 風見鶏 2007-11-11 07:06:15
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