だれが
竹節一二三

街灯はあたりをてらし
川はなにかのために流れる
夢のなかにいるような
うっとりと甘い夏のあめのなかに
かえるのくしゃみをきいて
はすの葉のうえにとびのった

傘がみずをはじく音
遠くのまどに明かりがついて
そろそろばんごはんの時間になる
ポケットから出したあめちゃんをくちにふくみ
かわりにぬけた歯をはきだした
はすの上にねころんで
だれかの迎えをまっている

だれがここにいるの
だれがかえってくるの
だれがそこにいるの

だれもいない
わたしもいない

雨のなかひとり

前髪をつたってしずくがひとつ
口をひらいて天をあおぐ
雨はひとところからわたしをねらう
そこにだれかいるの
雲のうえにだれかいるの
ロザリオをひたいに乗せてバランスをとりながら
雲のうえの星をみる

のどになだれ込む川は
わたしの一部となって海へむかう
やがてわたしは海の一部となり
蒸発して雲になる
雲から雲の上の誰かに雨にされて
地上にまいもどり
また
川を飲み込んで海に出る

だれがそこにいるの

今日はなにを食べようか
お風呂の匂いはなんだろう
さぼてんは芽を出したか
外灯は今日もついているか
こまごましたことたちはわたしの一部
わたしはだれかの一部
わたしはだれかで
だれかはなにか


自由詩 だれが Copyright 竹節一二三 2004-06-11 00:52:32
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