詩を書くことは好きですか
恋月 ぴの

めまいがするほどに単純な設問の数々
「はい」か「いいえ」のいずれかで答えよと記されていた
簡単な筆記試験だからと
人事部のひとはわたしを残し出て行った
小一時間もあれば出来るよね
何だかなあ
知り合いのツテなんだし面接だけですませてよ
寝不足も重なってか身の入らぬままページをめくる
ばっかみたい、うんなわけないじゃんか
これって何になるんだろう
ちょっとズルすれば会社の望むひとになりすますこと出来るのに
「詩を書くことは好きですか」
あれぇ、詩を書くひとって会社の望むひとじゃないのかな
ちょっと迷って「いいえ」にマルした
また出てきたよ
「詩を書くことは好きですか」
やばそうだから「いいえ」にマルした
二百問近くある設問はどうやら数回繰返されるらしい
どうしようかな
詩を書くことって悪いことなのかな
「詩を読むことは好きですか」
なんだよ、書いても読んでもいけないってことかな
何を探ろうとしているだろう
何を掴もうとしているのだろう
どうして「はい」じゃいけないのかな
ひとりきりの応接室のはずなのに誰かに見られている気がする
監視カメラでもどこかに付いているような
きょろきょろする姿なんて見られたくないよ
「詩を書くことは好きですか」
「いいえ」だよね、やっぱ
ここ落ちると親にしかられるんだよね
でもどうしよう
なんだか指先が震えてきた
やっぱ自分をごまかすのは良くないのかな
消しゴム忘れずに持ってきたよね


「詩を書くことは好きですか」





自由詩 詩を書くことは好きですか Copyright 恋月 ぴの 2007-11-09 21:13:26
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