小詩集
嘉村奈緒

メロウ おまえ ちい先生を見たか
庭の大きな老木に しあわせにしがみついて
羽化をする せむしの 背から
ギラギラとした 出てくるんだ
真っ昼間から 羽化だぜ
メロウ おい メロウ おまえ
出来ないだろう 一夏の恋も 泡泡とした
みんなあの木に吸い取られて
寄ってくる
たくさんの目ん玉の中で 独壇場だぜ
アバンチュールすぎて したたか忘れてた
メロウ ちい先生の粘液を見ると
ちい先生のような ツル眼鏡になるのだから
羽化したら 見るな
絶対に見るな





*





鶫を殺しながら通り過ぎる
春にも似たような日なのだから
わたしと恋愛をしよう
お前は野に咲いている花の名前を
丁寧に教えてくれればいい





*





彼はしたたかにクルミを割った
私は雨漏りのする屋根を修理した
彼はしたたかにクルミを割った
私は雨漏りのする屋根を修理した





*





僕の宝物に丁寧な名前をつけても
誰も発音できないでいる





*





その節は本当にありがとう
僕はもう
アルパカになってしまったけれど
ズックの紐がほどけて
永遠にほどけて
回転ブランコってこんな感じなんだろうなあとか
大きいシャボン玉を作ろうとして
液が逆流してきてうえってなったこととか
もうないんだなあって
切なくなったりもしたけれど
アルパカだし
これからきっと山頂にゆきます
どうぞ風邪などに気をつけて
お元気で




 


自由詩 小詩集 Copyright 嘉村奈緒 2007-11-08 21:13:05
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