テールランプ
佐々木妖精

まだひらがなしかよめなかったころ

ちちのうんてんするくるまのなか

さかみちのうえで

たくさんのくるまが

なかよくえがいてた

てーるらんぷのりぼんにあこがれ

ぼくもなかまにはいりたいとだだをこね

ははにあたまをなでられた



秒針が微動だにしない堕ちた季節と
短針が真逆へ移動する一瞬の喜びを繰り返し


自分の手で
自動車を運転するようになっても



あの時見た
テールランプの帯を思い浮かべ
もうその頃には戻れないのを知り
カーステレオで、ひとりの空間を形成する

今観るとそれは
途切れ途切れの点で
それぞれの車内は
隔絶している

チャイルドシートで眠る赤ん坊と
我が子を膝に乗せているつもりで
そろりと流れに乗る父親がいるだろう

閉塞感を振り切るため
法定速度に逆らい
赤い信号に苛立ち
エンジンをふかす青年がいるだろう

生涯の伴侶に先立たれ
秒針ばかりを追っている老人も
いるかもしれない

彼等との隔たりは
深い



秒針が動かない日は
カーステレオを止め
会釈すらできない距離にいる
窓越しの誰かに
不意に話しかけたくなることがある


てーるらんぷをつなげてください


自由詩 テールランプ Copyright 佐々木妖精 2007-11-08 09:32:00
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