キーパー
佐々木妖精

与えられた時間は有限
そう
産道から引き離された時から決まっている
二度と
母体に戻ることはできない
有限の砂が
流れ始める


そうしてあれや、これや
娯楽
勉強
仕事
それらの代価として
時間は消費され続ける

砂時計の砂が
決して
上へ
落ちないように
どこまでも
下へ

しかし

向かうべき方向さえ決まっていれば

それをいたずらに伸ばそうと
年越しそばを流し込み
長寿を願うことも

死の影に怯えた暴君が
日本に方士を送ることもなかった



俺は今死んでもいい
命一杯生きるが死んでもいい
目の前に、進むべき方角があるなら
満足だ


それは
いつでも死ねる人とは
似て非なるものだ

それは
絶望にとりつかれている

それは
あらゆる方角を向きたくないということ

やつは
キュルケゴールに
墓を掘ってもらうことすら望まない




やつをもし
ライ麦畑で発見したら
すり足で回り込み
キャッチする。必ず


自由詩 キーパー Copyright 佐々木妖精 2007-11-08 03:07:54
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