ゴムを踏んでる
たもつ


部長室にはいつも
風が吹いてる
日あたりのよいところで
書類の端がめくれている
窓を開けているのは
たぶん部長さんだと思う

机の上で
ピストルが少し色あせてる
微笑みながら毎日
部長さんが弾をこめてる
銃把のシールに書かれているのは
たぶん部長さんの名前だと思う

エノコログサなどの雑草がはえた
裏の空地には
夏の初めから
子供用の靴が一足忘れ置かれてる
靴の持ち主が今はもう
裸足でなければいいのに
部長さんとの相談は
大抵そのように始まり
いつ終わるともしれないから
途中には銃声が時々聞こえる

地面のゴムの部分を踏んで
古くて優しい人の
形のようなものが風に吹かれてる
たぶんあれが
部長さんだと思う



自由詩 ゴムを踏んでる Copyright たもつ 2007-11-05 20:36:20
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